【PTSDとは?】心的外傷後ストレス障害の症状、原因、克服のための治療法を徹底解説
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?強いストレス後の精神疾患
PTSDとは、Post Traumatic Stress Disorderの略称で、「心的外傷後ストレス障害」と訳される精神疾患です。
生命を脅かすような深刻な出来事(心的外傷/トラウマ)に遭遇したり、目撃したりした後、その強いストレスや恐怖から、時間が経過しても精神的な苦痛が続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。
PTSDの発症率は、トラウマを経験した人のうち約10%程度とされていますが、トラウマの種類や個人の要因によって大きく変動します。
PTSDの主な原因:心的外傷と脳機能の変化
PTSDの直接的な原因は、戦争、自然災害(地震、津波)、交通事故、性暴力や虐待などの極端なストレス体験(トラウマ体験)です。
これらの体験によって、脳内では過剰なストレスホルモン(コルチゾールなど)が分泌され、これが脳の構造や機能に影響を及ぼすことが分かっています。
特に、記憶や感情を司る重要な部位である「海馬」や「扁桃体」に機能的な変化が生じることが、PTSDの症状発現に深く関わっています。
- 扁桃体
過剰に活性化し、危険に対して過敏に反応するようになります(過覚醒、過敏性)。 - 海馬
萎縮や機能低下が見られ、トラウマの記憶を「過去の出来事」として適切に整理することが難しくなります(再体験、フラッシュバック)。
PTSDの主な症状|4つのカテゴリーと具体的な苦痛
PTSDの症状は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)に基づき、主に以下の4つのカテゴリーに分類されます。
| 症状カテゴリー | 特徴 | 具体的な症状 |
| 再体験症状 | トラウマ体験が意志に反して繰り返しよみがえる。 | フラッシュバック(現実かのように再体験)、悪夢、出来事に関する侵入的な思考。 |
| 回避症状 | トラウマを思い出させるものや状況を避ける。 | トラウマに関連する人、場所、会話を避ける。 感情を麻痺させ、関心を失う。 |
| 過覚醒・興奮症状 | 常に危険にさらされているような感覚で、神経が高ぶった状態が続く。 | イライラや怒りの爆発、不眠、集中力の低下、驚愕反応(びくつき)の亢進。 |
| 認知と気分の陰性変化 | 出来事に関する思考や感情が否定的に変化する。 | 自分自身や他人、世界に対する否定的信念の増大、自己評価の低下、将来への希望の喪失、持続的な否定的感情(恐怖、罪悪感、恥など)。 |
これらの症状が長期間続き、仕事や人間関係など日常生活に大きな支障をきたす場合にPTSDと診断されます。
PTSDの克服に向けた治療法
PTSDは放置するとうつ病や不安障害、アルコール依存などの他の精神障害を併発するリスクがあるため、早期の診断と専門家による治療が極めて重要です。
主な治療法には、以下のものがあります。
- 心理療法(サイコセラピー)
- 認知行動療法(CBT)
トラウマ記憶に関連する思考や感情の歪みを修正し、現実的な対処法を学ぶ。 - トラウマ焦点型認知行動療法(TF-CBT)
PTSDに特化したCBTで、トラウマを安全に処理し直すプロセスを支援する。 - EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
トラウマ記憶の情報処理を促し、その苦痛を和らげる専門的な治療法として知られる。
- 認知行動療法(CBT)
- 薬物療法
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬や抗不安薬が、再体験や不安、不眠などの症状を軽減するために用いられます。
PTSDは、適切な心理療法と薬物療法、そして周囲の理解と支援によって治癒可能な疾患です。
もしあなたや大切な人がPTSDの症状に苦しんでいる場合は、精神科や心療内科などの専門医療機関に勇気をもって相談することが、回復への第一歩となります。









